
可愛らしい3匹のねずみが登場するこちらの絵本。
私が読み聞かせをする上で、下読みの大切さと面白さを学んだ1冊でもあります。
ご夫婦でいらっしゃる小出淡さん、小出保子さんの共作絵本『とんとん とめてくださいな|福音館書店(1992年)』をご紹介します。
あらすじ
ハイキングに出かけた3匹のねずみが、帰り道で迷ってしまいました。
日がとっぷりと暮れ霧も出てくる中、遠くにお家を見つけ泊めてもらうことに。
「とんとん、とめてくださいな」
ところが返事はなく、そうっとドアを開けてみると・・・中には誰もいません。
へとへとに疲れていたねずみたちはベッドにもぐりこみますが、しばらくすると家の外で足音が。
やって来たのは、そしてこのお家の主人は誰なのでしょう?
マイペースなねずみと、家主のヒント
挿絵をゆっくりと見ていくと、赤色のスカーフを付けたねずみのマイペースな性格が伝わってきます。
他の2匹のねずみは誰もいないお家の品々を見ているのに対し、スカーフの子はストーブの前に置かれた揺り椅子に腰掛け、くつろぎモード。
ベッドにもぐった後も他の子が不安そうな表情を見せる中、一人すやすや気持ちよさそうに目を閉じていたり。
読み終わった後に表紙のイラストを見ると、ここでも性格が出ていたんだなと気付きます。
また、家の調度品をよくよく見てみると、家主がなんとなく想像できるようにもなっています。
流しにはりんごと鮭、棚にはハチミツとくまちゃとかかれたお茶、くまの形に彫られたドアノブとベッドフレームに、枕元に並べられた本は「くまのパディントン」「はちのいろいろ」・・・
挿絵の中にたくさんのヒントがちりばめられていて、見つけていくのも楽しい遊びになります。
言葉になっているのは挿絵の一部だけ
上記のねずみ達や家の様子は、本文中では挙げられていません。
見つけても見つけなくても話の大筋に関わりはありませんが、見つけられた子はきっと嬉しいはず。
言葉になっていない分、一人一人それぞれの形で物語が深まっていく。
絵本ならではの特別な読書体験だと思います。
読み聞かせの下読み
子どもたちに読み聞かせをする際、読む絵本の下読み・練習はとても大切だと教えられました。
幼児向けの絵本なら文字も少ないし、練習をしなくてもただ「読むだけ」なら難しいことではないかもしれません。
ですが、読むときに先述のマイペースなねずみのことや、家に隠された家主のヒントがあることを知っていると知らないとでは読み方が大きく変わります。
なにより、読んでいて楽しい!
ただし、読み聞かせでは基本的に書かれている言葉以外の「読み手の言葉」というものは、絵本の世界を邪魔してしまうことがあるので、楽しい発見を子どもたちに教えたくても我慢です。
(私も昔、余分な声かけが多すぎると叱られたことがあります・・・)
自分のお子さんなどに1対1で読まれるなら、一緒に絵を見てお話をしながら読むのも良いですよね。
こんな方にオススメです
対象年齢:読んであげるなら2歳から(福音館書店HPより)
- マイペースなねずみの様子が見てみたくなった方
- 読み聞かせの下読みの楽しさを味わいたい方
- 秋の夜に、ベッドの中で少しドキドキするお話が楽しみたい方
- 色鉛筆で描かれた、温かみのある挿絵がお好きな方
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